バルブオーバーラップは難しい
まぁエンジンのお話なのですが
エンジンの吸排気をつかさどるポペットバルブのバルブタイミング
それのオーバーラップのお話です。
そもそもオーバーラップとは何?
という話から始めると
吸気・排気の時に吸気バルブと排気バルブが一緒に開いている時のことです。
基本の4ストロークエンジンは720°ですべての工程を終わらせています。
そのなかで排気を終わらせて吸気を始めるタイミング
排気終了と吸気開始の上死点のタイミングでオーバーラップは発生します。
2ストロークエンジンでは180°で行程が終了します。
吸気・掃気をしているときに、ピストンの位置によって吸気ポートと掃気ポートが開いている時がオーバーラップです。
2ストロークエンジンはオーバーラップが割と大きいです。
ロータリーエンジンでは角度によって解説するのも難しく
吸排気がペリフェラルポート形状ではなくサイドポート形状になっている
RENESISでは構造的にオーバーラップが0になってしまうので例外ですが
13B REWは吸気がサイドポートで排気はペリフェラルポートなのでオーバーラップは少ないながらもあります。
オーバーラップを大きくとる理由は
排気ガスの圧力を利用して吸気量を増やす。
という事になっています。
ただ、オーバーラップを大きくとりすぎると圧縮比は下がります。
圧縮比は一定というような人がいますが、圧縮比は変わります。
カタログに載っているのは理論圧縮と言う物で
計算式で出すことができます。
式は(燃焼室面積+行程容積)÷燃焼室面積=圧縮比
となるのですが
エンジンの回転数によって空気を吸う吸入負圧は変わりますし
バルブが開いている時間によっては吸える量、排出する量も変わります。
この圧縮比の事を実圧縮比と言います。
完全な理論圧縮比を作り出すことは難しく
実圧縮比は理論圧縮比より下になります。
これを利用したのがアトキンソンサイクル、ミラーサイクルと言う物になるのですが
まぁこの話はまたの機会にしようと思います。
さて、どうしてバルブオーバーラップを大きく取るのか
それは、吸気量を増やしたいという事が関係しています。
良くレースカーやチューニングカーにおいて
ハイリフトのカムをいれたり、バルブリフト時間を長くするするためにカム山を丸めたカムに変更したりと、いわゆるハイカムというものに交換するという事をする人がいます。
(2ストロークエンジンやロータリーエンジンにおいてはポート研磨と言う物がハイカムへの交換に当たります。)
そういうことをするとオーバーラップ量やバルブリフト量が増えます。
バルブリフト量やオーバーラップを増やして、吸入量を増加させることで、パワーをアップさせる。
という事が目的なのですが
このハイカムと言う物を入れてオーバーラップを増やすと
始動時や低速時、燃焼の温度が低い時や流速がしっかりと確保できない時には未燃焼のガスが多く残ってしまうため
車検での排ガス検査を通すのが難しい…と言われます。
まぁハイカムと言う物自体、高速回転時に真価を発揮するものです。
そのために、メーカーはVVT-i(可変バルタイ)を付けるわけです。
それを活用して、低回転ではバルブオーバーラップを減らして
高回転時ではバルブオーバーラップやバルブリフト量を増やして
パワーを出すという。(今では燃費特性の改善に主眼が置かれていますが)
さて、オーバーラップと言う物は
本来は大きくとってパワーを上げるための手として使われていたのですが
時として面白い音を作り上げる要素になったりするんですよね。
私がその代表例として思い浮かぶのが、吸い込みと呼ばれる音です。
イメージとしては、マフラーを変更したGS400の音です。
エンジンを回しているときにいきなりスロットルバルブを閉じると
一部の排気ガスが逆流し面白い音になるという
スーパーカブでもマフラーを変えると割と変わるのですが
大きな排気量の2気筒のバイクのほうが大きな音が出て面白い
まぁその音を作ろうと思えば、バルブオーバーラップを増やせばできるのですが
デチューンになることもあるので、そう簡単にできるわけではありません
まぁ私は、パワー至上主義というわけではなく
フィーリング至上主義という立ち位置に近い人間なので
面白い音を作り出すという名目でのみエンジンを作り上げてみたいです。
それでは